南アルプス 白鳳三山
 北岳ー間ノ岳ー農鳥岳



山行報告  
報告者 中島貞夫   
山行日 平成22年8月3日〜5日   天候 晴れ
ルート    広河原―北岳―間ノ岳―農鳥岳―大門沢―奈良田温泉
 コースタイム  山行報告中に記載
参加者  リーダー:中島貞夫  サブリーダー:佐々木英夫  会計:吉津雅子、加藤幸子

男性:上角弘務、樋口 修、山口 博、金本好彰、         

女性:堀尾洋子、濱北紀子、堀 正子、大谷典子、玉井美智子、     

合計: 13 名 
 山行報告 

22年度の夏山例会の一つ、南アルプス白鳳(白根)三山縦走を歩いた。広沢峠までは甲斐駒・仙丈岳組と同一行動で、広沢峠で2時間待って広河原山荘に到着した。途中山はガスに覆われていて鋸岳・甲斐駒も見えなかった。

8月3日 曇り、時々小雨  18℃ 

山荘5:10 - 二又7:50 - 八本歯のコル11:50 ?北岳12:40 ?北岳山荘14:4

薄暗い中を全員元気に出発、夜の雨か水が流れている登山道をゆっくりと進む。二又に近づくに従って後から登ってくる登山者が増えてくる。沢には大きな雪渓があり涼しくて助かる。

回りはガスで、バットレスも八本歯のコルも後の地蔵山も隠れている。二又からは傾斜もきつい雪渓の横を登る、小雨が降ってきて急いで雨具を着る。雪渓の上端を横切ってジグザグ路を上がりきると丸太を組んだハシゴの連続、今日一番の難所だ。ようやくコルについたがガスの中である、またハシゴを上って水平道との分岐で昼食にする。12:40時北岳(3192.4m)へ着く、流れるガスは時折近くの稜線が見える程度へとすこしずつ良くなっていくようである。雲の切れ間に富士山がわづかに確認できた。北岳山荘まで約1時間花を見ながらゆっくりと下る。前方の間ノ岳やコルにある山荘が見えてきた。

 小屋はふとん一枚に1人の混み方で50人ほどの大部屋だが荷物置き場が少ない。食後だんだんと晴れてきて登ってきた北岳見えてきて、陽が射して小さい虹の中にブロッケン現象がみられ皆大喜びだった。

84日 晴れ、後曇り夕方雨  15

 山荘4:00 ?間ノ岳6:20農鳥小屋7:40 - 農鳥岳10:30 分岐11:30-12:10大門沢小屋15:1

夜中には星空も見えて今日の縦走は期待できそうだった。4時弁当をもらって出発、稜線を少し上がって茜色に染まってきた東の空から太陽が顔を出す。富士山はまだ黒く浮かんでいるが北岳や仙丈・甲斐駒・八ヶ岳は陽に照らされて薄赤くなる。上るにつれて北アルプス、中央アルプスや、南の塩見・荒川・赤石山系の山嶺がはっきりと見られ雲海に浮かぶ360度の大パノラマを満喫することができた。間ノ岳で朝食をとり、農鳥小屋では主から上昇してきた雲が雷を発生する危険性に注意するようにアドバイスを受けて先を急ぐ。富士山は東斜面を雲が這い上がるように覆ってきたし、北や西方向では大半の嶺が隠れてきており農鳥岳で今回最後の眺望をながめて大門沢方面への路を進む。ガスに覆われた中をきつい下りが続く、だが花畑もあり皆楽しみながら歩いうえかているようだ。予定時間と変わらないペースだが小屋が見えるのがずいぶんと遅く感じられたのは疲れが溜まってきたのだろうと思う。沢沿いに歩き出してからも1時間は過ぎてようやく赤い小屋の屋根がみえた。パラパラと降り出した雨が小屋に入ってくつろいでいると強い降りになり、濡れずにすんだ幸運に皆喜ぶ。粗末な小屋だが一部屋に我々だけ入れたので気分的にもゆっくりとくつろげたと思う。

 ただ身延から奈良田までの道が通行止めになっていることを小屋主より聞いて、急いで迎えのバスを夜叉神峠へ回るように連絡して、我々は奈良田から広河原へ移動して夜叉神峠へ乗り継ぐことにした。

85日  晴れ   山荘5:20 - 登山口7:10     林道ゲート7:30 

 昨夕の雨も夜には止み星空も見えて、朝窓から富士山が朝やけに浮かんでいるのがうれしかったった。5時前に朝食をすませ、バスの時間確認のために佐々木さんら数人に先行してもらうことにして、残ったメンバーはいくつもある丸太の橋やはしごを慎重に下る。つり橋を過ぎると山路も終わりに近いことが感じられ急に林道にでた。先行の佐々木さんがゲートで客待ちのタクシーと交渉して夜叉神峠まで契約したが、途中で芦安温泉まで延長して風呂屋まで直行、汗を流してさっぱりとして帰ることができた。
 
 南アルプス白根三山縦走
上角弘務 
 

南アルプスは7年前に、甲斐駒ヶ岳と仙丈ケ岳に登って以来の山域で、2回目です。

3000メートル超の三山縦走、ましてや北岳は日本第2の高山ですので、これは行ってみたいと思い申し込みました、しかし、今年は例会にほとんど参加していなかったので心配でした、案の定2日目の、登り登りの梯子では異常に疲れ、高山病のような状態になり、体がふらつき、きびきびと動けなくなりました、その場はゆっくりと確実な動作を心がけ、呼吸の吐き出しを2回にして、しのぎました、初めての経験でした。

北岳山荘に着いた頃から天気が回復に向かい始めました、そしてラッキーなことに、強烈な西日を背に、霧のスクリーンに映るブロッケン現象を見ることが出来ました。

3日目は天気に恵まれました、日の出、富士山のほか、360度の眺望を見ながらの縦走で、尾根歩き最大の楽しみを満喫しました、来て良かった、見えて良かった、としみじみ天気に感謝しました、農鳥岳を下りだすとガスってきました、そして小屋に着いてから夕立になり、天気はあたかも、我々の行動に合わしてくれている様でした。

北岳頂上からの展望と、高さ600メートルのバットレスが、見られなかったのは残念でしたが、満足な山行でした。

CL中島さん、SL佐々木さん、急斜面の登坂中に、私のストックリングを探しに下られた大谷さん、そして参加の皆さん、ありがとうございました。
 2010 夏山登山に参加して思う
 金本好彰
 

今回の夏山については、「かんなび」6月号で説明会の実施日・南アルプスの3ルートが表示されていた。

私は、説明会に行けなかったのですが、「説明会でどのように決めたのか、実施日程・ルート・トレの日程・世話人・」について詳しく「かんなび」掲載されるものと思っていましたが、何の表示もありません。

担当者に問い合わせたところ、「説明会で決めました、あなたが参加するのであれば、ダメだとは言えません、日程表等をメールで送ってもいいですよ」とのこと、非常に冷たい返事が返ってきた。

なんとかメールで受信して概要をつかんだ。

次回から、「このように決めました、説明会に来られなかった人も参加してください」と言う暖かい掲載文を「かんなび」に出していただくよう希望します。
 白根三山縦走記
 濱北紀子
 

夜半雨音で目覚めた。山荘を出るころには雨もなく気分もさわやか、三日間快晴を願いながら山の一日が始まった。樹林帯の中下界のことは忘れてどんな花々に出会うか楽しみだ。大樺沢のほとり、薄紫のハナシノブ、つめくさ、朝露にぬれ水滴がキラキラと輝き心なごませてくれる。岩場にひっそりと咲くビランチ、岩キキョウ、岩インチンなど数えきれないほどの花々、特に期待していたマンテマを目にしたときは声がうわづっていた。

ラグビーボールのようなかたちでその先端に小さい花、なんとかわいい花でしょう。目を凝らしてよく見るとたくさんあって感激です。

北岳、間ノ岳、農鳥岳への登り下りいろんな花々、雲上の花園、富士山、甲斐駒、仙丈ケ岳、南アルプスの山々が一望できて疲れも感じることなく楽しく歩けた。

また、いつの日かこのすばらしい大自然の中、ルンルン気分で歩きたい。

みなさんお疲れさまでした。
 北岳に登る
 山口 博
 

南アルプスは懐が深くてどの山も登山口に着くまでが大変ですが、最近はバスの送迎で簡単に現地まで入れる様に成り、楽に登れる様に成りました。

今回は3度目の北岳登山、3,000m級の山はもう最後かな?“まだまだ挑戦したい”と複雑な心境で、日頃から例会には出来る限り参加して体力の維持に努めてきました。

山友会恒例のペース登山で自分の体力を確認していますが、今年は昨年より3分の遅れで110分が切れたので、少し自信も出来て今回の白峰三山に参加しました。

先頭のSLの佐々木さんに御願いして2番目でゆっくりしたペースで歩かせてもらいました。

広河原山荘を5時出発で15時に北岳山荘に着いたとしても10時間も有るので、余裕を持って楽しみながら登りたいと思い、意識して遅いペースを取りました。

しばしばSL佐々木さんとは離れる事がありましたが、周りの花や風景などを楽しみながら登りました。CLで最後尾の中島さん遅くて済みませんでした。

八本歯のコルから吊尾根のコースは初めてでしたが流石に急登で梯子の連続で、一息入れる所が有りませんでした。幸い曇っていて汗も少なくて楽に登る事が出来ました。

これまでの北岳は何れも素晴らしい天気でしたが、今回はガスで周囲は何も見えない、残念!明日に期待しよう。集合写真を撮って早々に下山しました。

北岳山荘には2時半に着いたので食堂でビールを飲んでしばし歓談、夕食を済ませ外に出ると、ガスが切れて北岳が姿を見せたている。登ってきた北岳をデジカメに収めた。明日は素晴らしい天気が期待出来そうだ。

44時北岳山荘を出発、中白峰岳に550分に到着した。富士山の東からご来光がでる。赤く染まる空と甲斐駒ガ岳、仙丈ガ岳が正面に大きく横たわる。

間ノ岳には610分に到着ました。昨日とうって変わり素晴らしい天気です。頂上で展望を満喫して至福のひと時を過しました。

右手の稜線は2005年に登った塩見岳から北岳の縦走路で、宿泊した熊の平小屋が見える。13時間も掛かって小屋までは長かったのを思い出しました。

農鳥岳には1040分に到着しました。

大門沢分岐から小屋までは急な下りが長く続きましたが大門沢小屋には1510分に着き、コインシャワーで3日分の汗を流してすっきりしました。

シャワーを待っている人から“奈良田までの道路が通行止めになっている“と聞いて小屋の主人に聞くと、広河原へのバスで戸台から夜叉神峠に出なければ成らないとの事。

中島さん、佐々木さんの報告し、夜叉神峠まで出ることで、へいあんバスの迎えを夜叉神峠まで変更の手配をしてもらった。17日から通行止めになっていたのに、佐々木さんが小屋に人数の確認をした時に何の情報がないのは如何にも不親切だ。

5520分に大門沢小屋を出発、、中島さんからタクシーの予約で先発と別れようと指示があり、佐々木さんが先発で男3名女3名の6名が先発しました。

下山道は岩で滑り易くまた丸太橋などを慎重に下山しました。730分に3時間のコースをなんと2時間10分で下山しました。

お陰でタクシーが止まっていて予約をする事が出来ました。広河原に先客を送って行き引き返して来て貰いました。

後の組も820分に到着し、迎えのタクシーで広河原経由夜叉神峠から更に芦安の金山沢温泉まで送って貰いました。タクシー代2,800円は特別な出費に成りましたが早く着き助かりました。金山沢温泉には940分に到着し、早速入浴とバスが来るまで生ビールと蕎麦を頂き、楽しかった縦走が無事終わりました。

迎えのバスで17時過ぎに新田辺に帰って来ました。

CLの中島さんSLの佐々木さん会計の吉津さん加藤さん同行の皆様、白峰三山を楽しく無事に縦走する事が出来ました。有り難う御座いました。
 白根三山縦走記
 佐々木英夫
 

2010年8月、夏山は南アルプスの鳳凰三山、白根三山、甲斐駒・仙丈ケ岳で企画された。

白根三山の縦走を選んで参加、広河原から登山開始となった。

8月3日、大樺沢を登り八本歯コルを目指す。このルートは3度目である。北岳から間ノ岳・農鳥岳の縦走路には貴重な高山植物や長い隆起運動の末に現在の山体の骨格ができ、堆積岩の種類の違いによって非対称的な山を形成しているといわれていて、氷河期の遺物カールや、多重重山稜など複雑な地形はきっと山の不思議さを、また、固有種の高山植物の種類とともに楽しませてくれるに違いない。それらをゆっくり観察したいと思って参加した。

まず、高山植物だが、戸台口から北沢峠に来るまでにも、シナノナデシコ、ヨツバヒヨドリ,トダイハハコ、シモツケ、などの花が見られた。

大樺沢の左岸から右岸に道を巻き、再び左岸の残雪地の斜面で湿地の草地に、我が国の固有種ミヤマハナシノブやハクサンイチゲ、ミヤマキンポウゲ、シナノキンバイ、ウサザキクなどの高茎草原の花を見る。特に二俣付近はお花畑に適した土壌が堆積されているために豊富な高山植物を見ることができた。八本歯コルから派生した岩稜を数え切れないほどの階段を登りきると、コルに到着、天候が良ければ北岳の壮大なバットレスが見えるはずだが、今回は乳白色の雲の中で見えない。ここは北岳の山体を構成している堆積岩のうち、硬くて侵食されにくいチャートや石灰岩が500mにもおよぶ断崖絶壁を造形されていて,四方を見渡す頂上の鋭角は、まさに日本第二の高峰の風貌がある。

コルからは間の岳、その前面に展開する北沢カールを雲のなかに垣間見ることができる。

コルから北岳山荘への分岐までは石灰岩や玄武岩の岩塊が累々と湧き置いた登山道を登るが、ここではタカネビンランジ、イツメクサク、ミヤマキンバイ、シコタンソウ、チョウノスケソウ、などの風衝草原の植物が主体となっていた。キタダケソウは花の時期(6月下旬頃)が過ぎ見ることができないが、鞍部の分岐から北岳山頂に向かっているとき、タカネマンテマを発見した濱北さんの感激の奇声のお陰で、長年見たいと思っていた花を見ることができた。数年前、北海道日高のアポイ岳で見たマンテマより清楚で薄い緑色のラクビーボールの形が素晴らしかった。頂上を踏み、北岳山荘に下る登山道沿いでも、イワベンケイ、イワオオギ、キタダケヨモギ、タカネヒゴタイ、キタダケデンダ、タカネマンテマなどを観察した。

/4日 間の岳に向かうと砂岩、頁岩が露出していて、多重山稜がところどころに見られる。

特に山頂から農鳥岳に向かう幅広い山稜には、大小の凸凹・線状凹地や、岩塔が聳えていて、隆起当時の山体が大きく変化しているのがわかる。不思議と間ノ岳山頂は押しつぶされたような丸みをおびている。四方の岩盤が断層で滑ったか、または隆起した山の重みに耐えきれず陥没したか、氷河期の終わりに地割れが発生し横方向に引っ張られたかなどの原因により、割れやすい堆積岩(主に頁岩)が層状に分布しているため、北岳のような硬い侵食に強い岩峰が残らなかったのだろう。間ノ岳を周囲の落ち込みから、元の状態に戻してみると、今より数十メートルは高く聳えていたのではなかろうかと推定するのもロマンがあって楽しいものだ。氷河期には此の上に数百メートルの氷が覆っていたとは想像もつかない。     さて、不思議に思うが、白根三山を造山した石灰岩・玄武岩・チヤートなどは南太平洋から太平洋プレートによって運ばれ、(1億3000万年から7000万年)日本海溝で砂、泥など(砂岩、泥岩・粘板岩・頁岩・泥岩)とメランジェ状態で付加体になり、100万年くらいの隆起活動で高山帯になったといわれても信じがたい事実である。   (プレートテクトニクス理論による)

破砕された多重山稜を歩いていると、別世界に迷い込んだ感がする。

峻嶮の 白峰の岩稜踏み行けば 地球(そら)時空(じくう)に迷うがごとし    ひでお

農鳥岳に到着、大町桂月の歌碑を読む。

酒飲みて 高根の上に吐く息は 散りて下界の 雨となるらん   桂 月

なんと豪快な歌だろうか。大雪山の1峰に桂月岳がある。歌人であり登山家でもあった大町桂月はすごい人であったのだろう。農鳥岳を越えるこのあたりの地質は粘板岩で脆く、登山道も踏みやすいが広大な台地で視界の利かないときは迷いやすい場所でもある。

チングルマ、アオノツガザクラ、シオガマ、フウロウ、などの花を見ながら、かなり急降下の道を大門沢小屋に下った。夜、眠れぬままに、戸台口から大門沢小屋までに見た高山植物を数えたら55種にものぼった。何度も数え直しているうちに眠ってしまった。

 

白根三山の縦走路の醍醐味は、富士山から南アルプスのほぼ全山を同定しながら、土壌によって変わり行くお花畑や、地質の構成による山の不思議さに憧憬しながら歩けることだ。

山の歴史や、山稜の形態、高山植物の群落帯などを学習しながら山の自然史を知ることも、山の魅力の一つであろう。
大樺沢を登る
 
 
中白峰岳から見る朝焼けの富士
 
北岳山荘から見る北岳山頂
 
タカネマンテンマ(北岳)
縦走路
 
 
イワギキョウ
     
   美女と富士とで二重の幸せ